国内外の農機具メーカーの評判を解説
農業を営む上で、もはや欠かすことのできないものである農機具。田畑の面積が広くなればなるほど農機具は作業効率のアップに役立つ優れものです。
とはいえ、農機具は一般的なトラクターの場合でも新品では1台数百万円することも珍しくなく、中には1,000万円を超えるものも。中古の場合でも、馬力の少ないものでも50万円以上はすることが一般的です。
農機具選びは最終的に売却する際のことも考え、慎重に行うことをおすすめします。そこで今回はシェアの高い農機具メーカーを中心に、その評判について詳しくご紹介したいと思います。
国内農機具メーカーの評判
2016年3月に農林水産省が発表した「農業機械をめぐる情勢」の調査結果によると、農機具のシェアは(一社)日本農業機械工業会に属する68社の企業のうち、トップの4社だけで全体の8割を占めています。[注1]
最もシェアの大きいメーカーは「クボタ」で、次いで「ヤンマー」「イセキ」「三菱」と続きます。
国内メーカーを選ぶ最大のメリットとしては、耐久性や性能面に優れていることに加えて、万が一故障などをした場合にもメーカー保証などによりアフターサービスが比較的気軽に受けやすいという点もあるでしょう。
それではシェアの大きなメーカーを中心にそれぞれの評判について見ていきましょう。
[注1] 農林水産省 農業機械をめぐる情勢【pdf】
海外でも人気の「クボタ」
日本国内で農機具のトップシェアを誇るクボタ。1890年に創業し、本社は大阪府大阪市にあります。
クボタを代表する農機具といえばトラクターです。1970年代に国内で初めてトラクターを発売したのもクボタであることから、まさに国産トラクターのパイオニアといえる存在です。そのような背景もあり、今やクボタのトラクターはその実績とシェアの高さから「トラクターといえばクボタ」「クボタなら間違いない」といった圧倒的な地位を確立しています。
また、クボタの農機具において特に評判が良い点はその耐久性です。クボタの農機具は故障が少ないことで知られており、1980年代や1990年代に発売された農機具がいまだに現役で活躍していることも珍しくありません。
購入時には高額に感じる農機具ではあるものの、数十年もの間使用できるのであればコストパフォーマンスも非常に良いといえます。
そういった観点からもクボタの製品は新品・中古を問わず海外からも人気です。
なお、クボタではトラクターのほかにも耕運機やコンバイン、田植機などの農機具のほかに、除雪機や洗浄機なども製造しています。このことから、常に効率良く作業ができるための機器の開発に取り組んでいることがわかります。
使いやすさに定評のある「ヤンマー」
「ヤン坊・マー坊」のCMでもお馴染みのヤンマーは1912年創業。農機具のイメージが強いですが、漁船などのマリンプレジャーや大型船舶用のエンジン、発電機などのエネルギー分野など幅広い事業展開を行っています。
国内2位のシェアを誇るヤンマーの特徴は使いやすさです。シンプルな操作性で安心して作業ができるため、幅広い層から支持を得ています。
クボタ製品と同様にヤンマー製品は故障がしにくい点も人気の理由です。しかし、メンテナンスは大規模な整備工場や正規ディーラーでないと難しいことが多いため、その人気は販売拠点やサービス拠点の数など地域によって差があるようです。
価格の手頃さが魅力の「イセキ(ISEKI)」
「ヰセキ(ゐせき)」の呼び名でも知られる井関農機は愛媛県松山市に本社を置き、創業は1926年です。整地用・栽培用・収穫用・調整用と、農業における幅広い作業に対応する農機具を製造しています。
国内シェアはヤンマーとほぼ同じで、新車価格の手頃さや充実したアフターサービスが定評です。また、新しい技術の開発に積極的なことでも知られ、特許も数多く取得しています。
しかしその一方で、新車価格は比較的手頃なものの、故障が多いといった声が聞かれるのも事実。そのため、クボタのように海外での需要は高くありません。ただし、日本型のコンバインをいち早く発売したという実績もありコンバインについては海外でも需要が高くなっています。
中古市場でも人気の三菱マヒンドラ
三菱重工系列の三菱マヒンドラは1980年に設立。本社は島根県松江市にあります。前身は1914年に「サトー式稲麦扱機」を発明した佐藤造機です。その後、経営難から1980年に三菱機器販売株式会社と合併をし、三菱グループの一員となりました。さらに2015年にはインドのマヒンドラ社との間で戦略的協業に合意。そして現在の社名になったという経緯があります。
国内シェアは現在4位。農具機自体の評判としては、耐久性が良いことで知られており中古市場でも一定の人気があります。
さらに2021年3月には三菱マヒンドラはクボタと国内市場における業務提携に合意。これにより双方にとっては開発費用の低減が見込めるため、今後も多様なニーズに沿った農機具の開発が期待できるでしょう。
スタイリッシュなデザインが人気のオーレック
オーレックは1948年に大橋農機製作所として創業し、1988年に現在の社名へと変更されました。現在では、草刈機や耕運機、管理機、水田除草機といった農機具の製造だけにとどまらず「種なしスイカ花粉」の製造・販売や畜産事業など、さまざまな事業展開を行っています。
国内では歩行型および乗用型草刈機でトップシェアを誇っており、さらに製品のデザインもスタイリッシュで独特の雰囲気があります。特にこれから農業を始めようとする若年層の方からは注目を浴びそうです。
ロータリーのラインナップが豊富なNIPLO(ニプロ)
NIPLO(ニプロ)で知られる松山株式会社は1902年創業の老舗企業で、本社は長野県上田市にあります。主要製品はロータリーなどのトラクター用作業機や自走式の野菜収穫期、野菜包装機です。
その中でも特に農業の基本となる土づくりに活躍するロータリーはラインナップが豊富で、中古市場においても需要が高くなっています。
海外農機具メーカーの評判
海外メーカーの農機具の特徴は馬力の強さです。基本的に海外では日本の田畑とは別物ともいえるほど広大な面積の田畑で作業をすることになるため、ほとんどの製品が65馬力を超えています。
また、馬力だけではなく頑丈で高性能な点も海外製の農機具の大きな特徴です。そのため、世界規模で見た場合、日本製の農機具に比べ海外製の農機具の方が需要は高いといえます。ここからは世界的にシェアの大きなメーカーを中心に、それぞれの評判について見ていきましょう。
型落ちモデルでも高値で取引されるDeere and Company(ディア・アンド・カンパニー)/アメリカ
ディア・アンド・カンパニーはアメリカ・イリノイ州に本社を置く農機具メーカーで、農機具のほかにも建設機械の製造も行っています。1837年創設の老舗メーカーで創業者の名前でもある「ジョン・ディア」という呼び名で有名です。
農機具の市場では他社の追随を許さない世界一のシェアを誇っており、グリーンの車体にイエローのホイール、さらに鹿のエンブレムのついた車体がポイント。
また、トラクターの馬力の強さがあることでも知られ、北海道などの大規模な田畑を持つ農家からは日本製のトラクターよりも使いやすいとの評判もあります。
海外メーカーではあるものの、日本ではヤンマーと提携をしているため新車も比較的スムーズに購入が可能です。さらに海外からの人気も高いため、70年代の古いモデルや型落ちのモデルも高値で取引きされることも少なくありません。
世界シェア第2位のCNH Industrial(シーエヌエイチ・インダストリアル)/イギリス
2013年にCNHグローバルとフィアット・インダストリアルが経営統合をし、誕生したメーカーで本社はイギリス・ロンドンにあります。農機具以外にも建設用機械やトラック、バス、軍用車など幅広い事業展開を行っています。
農機具の分野ではティア・アンド・カンパニーに次ぐ世界第2位のシェアを誇っており、農機具の売上げのうち半数以上はトラクターによるものです。
約140の国や地域で販売されているMassey Ferguson(マッセイ・ファーガソン)/カナダ
世界的にも有名なカナダのトラクターメーカーで、日本ではエム・エス・ケー農業機械株式会社が輸入販売を行っています。日本に輸入されている海外製の農機具の中でも非常に人気の高いメーカーですが、世界的にもおよそ140の国や地域で販売がされているトップメーカーです。
マッセイ・ファーガソン製の農機具の特徴はシンプルな操作性にあります。農機具の性能が向上するとどうしても操作も複雑になってしまいがちですが、マッセイ・ファーガソン製の農機具に関してはそういったことがありません。
また、アフターケアが手厚いことも人気の理由です。海外製ではあるものの、日本にも営業所があるためきちんと対応をしてくれるようです。
なお、全般的にどの車種も人気が高いですが、その中でも「MF6600シリーズ」と呼ばれる車種は非常に人気が高く、中古市場でも高値で取引されています。
操作がスムーズなCLAAS Group(クラース・グループ)/ドイツ
1913年創業のクラース社は小さな村にある鍛冶屋からスタートし、現在は欧州を中心に世界的にも広く知られる農機具メーカーです。
日本ではエム・エス・ケー農業機械株式会社などが取扱いを行っており、特徴のひとつとしてトラクターやハーベスター、コンバインなどの操作性に統一感があることが挙げられます。そのため、同社のトラクターからコンバインに乗り換えた場合でも操作がスムーズで、乗り手に優しい造りといえます。
農機具選びでおさえておきたい2つのポイント
ここまで、国内、海外両方の主要な農機具メーカーをご紹介してきましたが、それぞれに特徴や支持される理由があることがおわかりになったかと思います。
とはいえ農機具は安い買い物ではないですし、実際に購入するとなると何を基準に選ぶべきか迷ってしまうものです。そこで、ここからは農機具を選ぶ際におさえておきたい大きな2つのポイントをお伝えしておきたいと思います。
国内メーカーにこだわる必要はない
アフターサービスのことなどを考えると、つい「国内メーカーの方が安心」などと考えがちです。しかし、海外メーカーの農機具であっても、輸入を行っている代理店が国内にあればアフターサービスをきちんと受けることができます。
国内メーカーか海外メーカーかで迷うよりは操作性や馬力の強さなど、自分にとっての使いやすさで選ぶことをおすすめします。
その地域に強いメーカーを調べてみる
農機具メーカーのシェア率は先にお伝えしたとおりですが、国内や世界といった広い範囲ではなく、特定の地域で見た場合にはそのシェア率が広い範囲のシェア率とは大きく異なることがあります。
これは例えば扱う田畑の面積の広さや、農法の特性、ディーラーや整備工場の拠点数などが地域によって異なるからです。
特定のメーカーの農機具を使う農家が多い場合にはそのメーカーにすることで大きなメリットがあるかもしれません。そのため、購入前には自分の地域はどのメーカーが「強い」のかといったことも調べてみると良いでしょう。
農機具は売却時のことも考えて購入を
農機具は簡単に買い替えられるものではありませんが、何らかの理由で手放すことを考えた時には、乗用車と同じように売却できます。
なぜなら、中古の農機具の需要は高く、特に今回ご紹介した主要メーカーのものなどは、海外での人気も高いからです。また、仮に本体が故障してしまっている場合でも部品レベルでの需要もあります。
そのため、農機具の購入時には、操作性などを重視することはもちろんですが、将来的に売却をする際に、需要が高いメーカーやモデルなのかといったことも視野に入れながら選ぶのがおすすめです。
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